早暁の江ノ島の防波堤の上
江ノ島

一つの祭りが、いま、終わりを迎えようとしていた。

期せずしてその最後の舞台は、早暁の、江ノ島の、防波堤の上となった。

昨日の夕方から五人で飲み始めた最後の送別会。

一人減り、二人減りしてニ次会は三人になった。

連夜の送別会の疲れだろう、
座ったまま寝てしまった彼の隣で、
残された二人はいつになく話に花を咲かせた。

やがてほどなく彼も話に戻り、
午前三時ごろだろうか、店が閉店になった。

最後まで残っていた客は私たちだけ。

ここ数週間の彼と私には、
すっかり当たり前になってしまった風景だった。

江ノ島
江ノ島

二人で飲んだあと、近くに住む営業を誘って飲み直した夜もあった。

後日その営業が再び飲みに誘ってくれたが、
勘定のときにお金を持ってなくて、
頼れる営業であることを再確認した夜もあった。

店の元気なお姉ちゃんが二人と同じ丙午だということを
知り、看板過ぎまで話し込んだ夜もあった。

6月9日のお姉ちゃんの誕生日に、
二人でその店に行って祝おう、と言っていた約束は、
その思いとは裏腹に、酔っ払いの冗談になりつつあった。

みんなで寿司の食べ放題に行ったあと、
二人でカラオケに行った夜もあった。

カラオケをハシゴした夜もあった。

カラオケに行ったあとは、チャンポン屋で締めるのがお決まりだった。

もつ煮込みをかならず一つずつ頼むのも、
二人で飲むときのお決まりとなりつつあった。

二人に付き合って閉店まで飲み続けた妻子持ちの先輩が
次の日から飲み会禁止令を発令された笑い話もあとに残った。

フロム・ダスク・ティル・ドーン

店を出てしばらく三人で歩いたあと、

車を拾って海へと向かった。

夜明けの睡魔が押し寄せるなか、

海を左に家路につくつもりだったが、

変わろうとする信号につられてか、

期せずしてハンドルは江ノ島へと向けられた。

江ノ島
江ノ島

一つの祭りが今まさに終わりを迎えようとしているのを
ひしひしと感じていた。

早暁の江ノ島の防波堤の上。

江ノ島を愛し、江ノ島の海を愛した男が、今この地を去ろうとしていた。

その熱い思いは、休み明けに彼から届いた一通のメールがすべてを物語っていた。

昨日は、お忙しい中、送別会を催して頂き、有り難うございました。
また、お心尽くしの品々を頂戴し、光栄の極みに存じます。
森さん、和田君には、朝までお付き合い頂き、お礼の言葉もございません。
お二人と、江ノ島に来れるとは思ってもいませんでした。
波穏やかな早暁の江ノ島で、防波堤の上をゆっくりと歩いたり、
霧でかすむ水平線を見つめたり、最後の江ノ島をかみ締めました。
この風景が、こんなにも愛おしいのは、
ヨットに明け暮れたシーズンを海が思い出させるから、
過ぎ去りし永遠の日々が、記憶となって風景に溶け込んでいるからなのだ。
今まで、何度この海に来ても、むかしを思い浮かべる事などなかったのに、
それが、今、切ない程、胸に込み上げてくる。
住み慣れた湘南の地を去らなければならない日が、ついに訪れたのだなと、
最後の瞬間を感じていました。
朝の海の清爽な空気に身を清められ、内に精神は充実し、心にかかる雲はなし。
皆様には、シ電在籍中、大変お世話になり、感謝致しております。
どうか、お身体に気をつけて、仕事に、プライベートに、頑張ってください。
体力と時間と経済力が続く限り、江ノ島に通ってきますので、
お時間がゆるせば、また、お会いしましょう。
そして、いつかかならず、大阪からここに、舞い戻ってきます。
きっとです。
出張、旅行等で、関西にお越しの際は、一声かけて下されば、
ご案内ぐらいは、できると思います。
大阪の地から、皆様の健康と、成功と、ご多幸をお祈り致しておりまする。
それでは。